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抱きしめて 夏3


ザザーン・・・



ザザーン・・・



海岸沿いに広がる駐車場。


そこで私は君を抱きしめていた。





「ねぇ、どうしたの」


君はその言葉で沈黙を破った。


しかし私は答えなかった。


その代わりに、もう一度

ギュッと力を入れた。


声を出すのが怖かった。

固く閉じた口をもしも開いたら

叫んでしまいそうで。


高揚した心が爆発してしまいそうで。口を開けたら。


どんな言葉になるのか分からない。


いや、おそらく叫ぶだけだったろう。


君が口を開いたので

この瞬間に君を抱きしめていることを認識し

君の香りや開放的な潮風を一気に吸い込んだ。


胸が高鳴る。

目は天を仰いだまま

私は心の目で君を見つめていた。


私の記憶の中の君を呼び起こし

今抱きしめている君を創造する。

肉体は密着しているが

心はイデアの中の君を見るのだ。

天高く舞い上がる理想がなければ

想いは血液となり

下半身へとなだれ落ちるであろう。

そしてそれは性の欲望となり

女性としての君を求める。

香り、肌の感触

全ては性のシグナルへと変わる

そうなれば君を見つめる我が目は

血の気をおび

体からは獣の息吹を発するだろう。

この場では無理だとしても

できるだけ早くに己の欲望を達成したくなる。

戦略的な思考とはそこから発生するものだ。



しかしそんなものは刹那だ。

肉体の欲望などきりがない。

満たしては萎え そしてまた満たす。

この繰り返しとは、いかに不毛だろう。



私は目も覚めるほどの興奮を君から得ていた。

抱きしめることでね。


君の力を借りて空を飛ぶほどに高揚できる。


魂が高まれば血液が下半身を漲らすことはない。


君の香りは欲望のシグナルではない。

魂の糧だ。


TUBEはどうなった。