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抱きしめて 夏

トンネルを抜ければ、海が見える。

愛車のカローラは軽快な走りで国道を進んでいる。

 

このルートは山本パイセンから教えてもらった。



「窓、開けてもいい?」


助手席の君はそう訪ねた。


私は頷く。


ボタンを押し そして窓ガラスが下がる。

そのボタンを押した君の指がとてもきれいだった。

私は見逃さない。そうしたディティール・・・。


開いた窓から風が車内へと運ばれる。


そして、最高のタイミングでトンネルを抜けた。


海だ。


風に海の香りがまじる。

太陽が海を照らしている。

キラキラとよせる波。


車は右折し左に海を見る。

君は海を見て喜んだね。


「海っていいよね」

君のその言葉に私は微笑んだ。

君が眩しかった。


国道の脇には趣味のよい店が建ち並ぶ。

レストラン、サーフショップ

ホテル。

どの建物にも太陽の光は平等に注がれる。

私はサーモンピンクの建物が好きだ。

信号まちのあいだ、オークリーのフロッグスキン

を外した。


そして君を見つめた。


サングラスをダッシュボードにしまい

再び車を動かす。


「何か聴こうよ」

君はそう言った。


私は無言でオーディオのスイッチを入れた。

TUBE

夏を抱きしめて


車は静かに進む。


君が着ていたポロシャツを私は忘れない。

ラコステだよね。

 

私は勝負服のストゥシーのTシャツ1枚。


目的地の駐車場にようやく到着。

車を降りる。

まずは私から。

すると突風が背後から吹き付けた。

私は帽子を吹き飛ばされた。

 

流行の白いバケットハットだ。

それを見て君は笑った。

初めて見た君の笑顔に、私は心を奪われた。

車内にいる君を私はしばらく見つめていた。


ふと我に返りドアを開ける。

 

君は車から立ち上がり

少しよろけた。

そして私はいきなり

 

君を、抱きしめた。




車ではTUBEがかかったままだった。