マイ・ルーム 7

PROLOGUE

9ヶ月間、私は狂いに狂った。
洞窟のような部屋で暮らし夢をかなえた。
誰にも邪魔をされない部屋で。
大音響、映像。
一寸歩けば山下埠頭。

だがもう満足である。
色々な嗜好錯誤ももう沢山だ。

'05年、1月、私は実家へ戻った。
妹は就職し、その会社の寮に住むため
家をでていた。かつての北側の部屋
に再び佇む。

このマイ・ルーム・シリーズが始まった
'97年の自分がいた。
まっさらな部屋、そこにかつての
自分を感じた。
カッコ良さを求め、また自分の可能性を
求め苦闘してきたのだ。

25歳の私は、自分の限界を知っていた。
嘆きは分厚い壁となり
その中で固まった。

ジ・エンド・オブ・マイ・ルーム

 

マイ・ルーム 7

 

部屋造りのコンセプトはいたってシンプル。
最初に戻す。これだけだった。
只、音響系の機材がかなり増えているので
その配置等は若干悩んだがその他は
何も考えなかった。

ソフト(CD、DVD)のストッカーは新に
購入した。東急ハンズにて壁に打ち付けるタイプの
ラック。300枚はゆうに入る。

完成迄にかかった時間は一週間。
だが、ここで書き記すほどの興奮もなく
淡々と部屋は整っていった。
最後に椅子が来て出来上がった。

窓から外を見る。
エメラルド・グリーンの幼稚園の壁は
そのままだった。

何も感じない。

机の左にはフラットにCDJに繋がっている。
その横にはアナログ・ターン・テーブル。
その下と奥には全てのアナログ・音源。
部屋のコーナーにテレビ。その後ろから
天井まではデジタル音源が壁一面を埋めている。
その横にスピーカー。

もしかつての私だったらそこで何日でも
ミックス・テープ造りに没頭したことであろう。
しかも、今はそれをCDに焼けるのだ。
約10年前には夢のような話。

垂唾ものの音源達にため息をついただろう。
だが、今は何も思わない。
何も造る気にならない。

音楽面のみを考えた場合、それはアイ・チューン
とアイ・ポッドのせいかも分からない。
圧倒的な利便性。
その前には音をつなぐ遊び心など
消え失せてしまう。

無理矢理ミックス・テープを造ろう
とするが、途中で「もういいや」となる。
ある意味でかつて失敗した「音楽断ち」
が出来ているのかもしれない。

また、屋根裏は書庫として復活させた。
マンガのアイデアのモトを集めた。
「狂った9ヶ月」の間に私は可能な
限りアイデア、デザインのモトを集めた。
服を買わなくなり、本ばかりを買った。

参孝・文献のカテゴリーで一部紹介しているが
本当に色々と集めた。
環境は整った。

仕事も無くした私は「ニート」となった。
そのまったくの空白の時間で造られたのが
書籍『NEW SENSE』である。

創作意欲が急速に失われていく中で
今迄の軌跡を記したかった。
思想を文にしたかった。

実際、作業を進めるのに
現在のこの部屋は非常によく機能してくれた。
心の底迄が静けさに包まれた中での作業。

「ポエム」は私の良心、ジキル・サイド。
「思想」は狂気のハイド・サイド。
静けさの中でその芯を表したつもりである。

後者が私の中から消えることはないだろう。
だが、もうメインに立つことはない。
9ヶ月の生活で分かった。また、そんな狂気
にすがることもないだろう。もうブレたくはない。

ニート生活中に旅にでた。
熊野大社伊勢神宮を巡る旅。
静けさのマスター・ピース。
今迄に経験したどの旅よりも衝撃的
であった。ここでは書きにくい
神秘体験もあった。

ボロッ、ボロッと色々なものが
落ちていく。少し前まで大事に
していたものでも簡単に捨てることが

できるようになった。

 

※7回に渡ってお届けしてきました
「マイ・ルーム」はこれをもって
終了させて頂きます。

次回シリーズは「トラッド・スタイル」

というのを予定しております。

よろしくお願いします。